親戚が東京で新規開業。で、思うこと
歯医者さんって、一族揃って「歯科関係者」というケースが多いですよね。
主人の一家も3代続く歯科で親戚一同も歯科医師。私の実母方の祖父も歯科医師で実母は10人兄弟ですが半数が歯科医師や歯科衛生士・歯科技工士をしていて、その孫達も(私も含めて)だいたい歯科医師か歯科衛生士になっている人が多いです。歯科関係は一族郎党、永代歯科関係者というケースが多いですね。2世・3世の先生をよく見かけます。
私は前の記事にも書きましたが、本当は美大に進んで日本画をしたかったのですが、母に「日本画では食べていけない、手に職をつけろ」ということで、泣く泣く歯科衛生士の資格をとることにしました。手に職をつけるのなら看護師がよかったんですが受験が間に合わず…。高校時代から親戚の歯科医院でずっと歯科助手としてバイトをしていたのでもう歯科開業医勤めはうんざり…。卒業後の進路は歯科医院勤務ではなく製薬会社に入社しました。どうしても当時は歯科医院だけは働きたくない!!と頑なに教務主任に進路相談で話をしていたので就職活動も歯科医院は除外でした。
結果的には製薬会社では接遇を身につけられたのとマーケティングの必要性を実感できたこと、マーケティングデータをもとに販促物などを作ったりしていたのでそれが歯科開業医でも資料を作成する際に役に立っていること、某雑誌編集部にも勤務できたので出版関係の特殊な世界も垣間見る事が出来たので、遠回りをしましたが外の世界を見てから歯科に戻ってきたので「どっぷり歯科」の人間にありがちな「世界は歯科中心に回っている」的な考えはもたずにいれたので良かったと思います。正直未だに会社勤めに未練はあるのですが、自営業として歯科医院を開業してしまったからには未練を断ち切り医院の繁栄の為に自分なりに気持ちを切り替えて頑張ってます。
さて、歯科一族の話に戻りますが、何故か父親が歯科医師をしているとその息子・娘も歯科医師になる場合が多いです。父親は跡を継がせたいと思っても子供が歯科大を卒業しある程度臨床が出来る年頃になって外の世界を見てしまうと、親の診療が古臭く感じて「親とは一緒に働きたくない」となるケースがあります。また「大丈夫だろう」と親子で一緒に働いてみるも治療方針や患者様へのスタンスの違いから親子間なので遠慮がない分言い争いが多くなりトラブルになる場合が多いので結局子供が親の診療所から出て行ってしまう、もしくは親が引退するというパターンをよく見かけます。(当院も、です…苦笑)
ご多分に漏れず、母方の親戚のおじさんの息子(歯科医師で30代なかば、私とあまり年が変わりません)も東京で勤務医として何年か働いていてから地元に帰省して親の開業している歯科医院で働きはじめましたが、帰省してすぐに「親子診療トラブル」が絶えず父親の医院から飛び出してまた東京にもどり、このたび東京にて開業することとなりました。
息子が戻ってくるからあとの返済は息子に…とあてにしていた父親(親戚のおじさん)はどうするのか、息子も東京で新規開業なので借入する際の保証人や開業・運転資金はどうするのか…などなど、2年前に開業して痛い目にあった私達夫婦の身としては「どうなってるんだろう」とお節介ながらも心配になってしまいます。本当に開業はナメてかかるとえらい目にあいますから…。
私は母経由でしか話を聞いていないので親戚のおじさんの息子さんの開業に対する詳細は知りませんが、東京なんて激戦区での開業はコネか、研修会で高名になっている、もしくは歯周病やインプラント・口腔外科などの専門医を持っているなどの特殊技術がない限り自殺行為に近いです。一般歯科のみのオープンならよほど医院をデザイナーに頼んでお洒落にするか、接遇を高級ホテル並みにする、全員スタッフが英語が話せるなど何か特殊な事をしないと生き残りは難しいかと思います。実際に東京ではもうそのような取り組みはあたりまえかもしれません。一般歯科で特に特色がないのなら絶対に勤務医でいたほうが得策です。勤務医でいる間に開業に向けての勉強や下地を作っておいても決して遅くはありません。
もし、どうしても都市部で開業をされるなら絶対に歯科に特化した大手のコンサルトを入れてマーケティングリサーチや経営戦略と資金計画を練ってから開業すべきです。勇み足の素人開業は絶対に失敗します。ましてや都市部ですとテナント料も高額になりますし人件費も高いのでよほどの売上を確保できる状態にしておかないと運転資金もすぐに底をつき資金繰りが困難になります。テナントでも郊外の医療フロアなどに入れればまだいいですが、飽和状態のところでの開業となると…。考えただけで怖ろしいです。
これは私達夫婦が実際に「無計画開業」という怖い経験をしているのでわかることなのですが、しつこいですが本当に一生を左右する大きな選択になるので開業する際はじっくり綿密に計画的に行って下さい。
開業してしまうと、勤務医やスタッフのように「イヤだから辞める」という訳にはいきません。責任は全て自分に降りかかります。辞めたくても辞められません。私達夫婦もこの開業した2年間で何度も辞めたいと思いました。ですが開業してしまったものはもう前に進むしかありません。歯を食いしばって頑張っている状態です。決して開業は甘くはありません。開業医が儲かる時代は終わりました。本当に現実は厳しいです。
東京で開業する親戚のお兄ちゃんには、どうか私達の二の舞にならないように願うばかりです。
今日のヒトコト…開業医は儲かりません。赤字覚悟で!よほどの覚悟が必要。