« 医院のお花&庭の紫陽花の植え替え | トップページ | リフォーム打ち合わせも大詰めに…ですが »

2009年6月14日 (日)

ほっとけない!地方の医療従事者不足

みのもんたさんの朝の番組風に「ほっとけない!」と読んでいただければ幸いです(苦笑)

そんな小話はこれくらいにして、当院も田辺に開業して3年目になります。

地域で口腔外科専門の標榜をあげている医院は当院のみなので、地域の総合病院口腔外科や一般内科・外科などの先生方から紹介状を頂きハイリスク疾患の方の一般歯科治療を担当することも多くなりました(透析中や心臓病、糖尿病、血液疾患、ガンなどで抗がん剤治療や放射線治療中などで現在通院患者様などの一般治療を依頼を受けて行っています。疾患に対する知識がないと、万が一、治療中に発作や大量出血などが起こった場合でも一通りの点滴や救急薬剤が揃えてありアクシデント時でも冷静に対応できる口腔外科専門開業医が受け皿となりハイリスク疾患の患者様は診るのが都市部では一般的です)

「総合病院口腔外科」と「一般開業医口腔外科専科」としての地域住み分けのシステムもやっと3年目にして出来つつあります。ご存知でない方も多いのでご説明致しますが、通常、大学病院や総合病院の口腔外科は入院中の患者様で外出許可の出ない方に限り一般歯科治療を行うのですが、通常、通院の患者様に関してはよほど重い疾患でない限り一般歯科治療は行わないのが通例です。ましてや健常者の方の一般歯科治療は原則として行っていません。なぜなら「口腔外科」という科は「一般歯科」とは違い口腔内のガンや、事故などでの特殊インプラントが必要な患者様、顔面骨折、口腔内腫瘍、開業医では抜けない難抜歯など全身管理下で入院加療を必要とする治療がメインですので、むし歯の治療まで手が回らないのが実情です。ですのでむし歯などの一般歯科診療は開業医の先生に一任して「一般歯科」と「口腔外科」の住み分けを行うのです。よく聞くのが「開業医でどこに行ってもむし歯が治らないから大学病院に行ったけど診て貰えなかった」というお話を聞きますが、基本的に口腔外科ではむし歯治療は特殊なケース以外は専門外ですので治療を行わないケースが多いです。(極端な話をすると、風邪で熱が出たのに内科に行かず耳鼻科に行った、というくらい「一般歯科」と「口腔外科」は似ているようで違う科だと思ってもらえたら分かりやすいかと思います)

「口腔外科」とう科自体もだいぶん地域に浸透してきて、基礎疾患をお持ちの患者様やインプラントご希望の患者様もご来院くださるようになり、「口腔外科」を理解していただいて嬉しく思います。

しかし、口腔外科の治療は全身疾患の状況をカウンセリングを行いお話をお伺いしたり、治療状況を観察しながらの診察になりますので、お一人お一人の診察に時間がかかるため、完全予約制を取らせていただいているのですが当日の診療情況によって患者様に待ち時間が長くご迷惑をおかけしていると言うのが現実です。

医療行為が出来るのが資格のある人間が主人と私だけで、診察台も2台。しかも主人の外来とは別に私も歯周病外来という独立した外来を持っていますので物理的にも一日に診察できる人数というのが限られてくるので完全予約制をとっているのですが、やはり電話をしてもなかなか予約が取れない・急な痛みが出たなどで予約外で来院される方も多く、一日の診察ができるキャパシティを超えた数の患者様を主人を中心に指示を受けて私も診て行くという形をとっていますが、さすがに医療従事者2人・診察台2台では現状この状態で診察を続けていくのは難しいのが現状です。

本当に患者様にはかなりお待たせしてご迷惑をおかけして申し訳なく思いつつ毎日診療を行っております。

さすがに診察台2台では、主人の診療と私の診療で各自一台ずつ診察台を使うので診療が追いつかないため、7月に診察台をもう一台増やす予定です。あと、地域的に患者様同士がお知り合いということも多く、カウンセリングでお話を聞くときに全身的な疾患のことやインプラントなどの自費診療などデリケートなお話をするケースが多いので、お知り合いの方や周りに話が聞こえないようカウンセリングルームも完全個室を作り患者様とのお話の際のプライバシー保護も重視した改装を予定しています。これで少しは待ち時間が少なくなるとは思うのですが…。

ハード面はこのように改善できても、マンパワーはなかなか改善できません。

当院を開業してから歯科衛生士の求人を出しても求人が集まりません。この2年間で「18年臨床を離れているのですが給料は○○円(かなり高額)ください」といった無茶な問い合わせが1件あっただけで(この問い合わせは田辺の他の歯科医院でも歯科衛生士の求人を出すと必ず問い合わせがあるそうで有名なんです。歯科の世界は狭いので情報は内々で通通です)どうしても、どうあがいても全く歯科衛生士の求人は集まりません。

これは当院に限ったことでなく、田辺全体にいえることで田辺での歯科衛生士不足はかなり深刻です。どこの先生も「歯科衛生士の求人を出しても全く集まらない」と嘆いておられます。地域新聞にも毎週のようにどこかの歯科医院が「歯科衛生士募集」で求人記事を出されていますが全く集まらないのが現状。

ただでさえ、歯科衛生士というのはなり手不足な上に、平成19年から歯科衛生士も就学年数が2年制から3年・4年制(専門学校の場合3年制・大学の歯科衛生学科の場合は4年制)に引き上げがなされたのですが、どの学校も定員割れしている状態です。

歯科衛生士の資格を持っている私が言うのもなんですが、就学年数が増えて看護師と同じ就学年数になると言うことは歯科衛生士の地位向上として嬉しい事ですが、実務的にいいますと3・4年制になったからといって業務範囲が増えるわけでもなく、歯科医師の先生も「3・4年制になっても歯科衛生士として何か業務がたくさん出来るようになるわけでもないんだし、3・4年制の子達が就職してきたからと言っても給与を上げる事が出来ない」と言うのが本音です。

なぜ歯科衛生士の仕事に魅力がないかというと、看護師のようにキャリアアップの道が殆どないということ、働く場所が「歯科医院のみ」と限定されてしまうこと、業務範囲がおもに歯周病治療のみということ、歯科医師の先生が若い衛生士しか採用しないということ。その理由としては「若い子が人件費も安くてかわいいから」と思われがちですが、結婚して子供が出来てとりあえず子供を保育施設に預けて臨床復帰しようとしても、歯科衛生士の働く場所と言うのは個人医院ですので看護師のように総合病院で院内に保育施設を整え子供をそこに預けて働けるなどの環境はありません。ですので、お子さんをお持ちの歯科衛生士の方はよくあるケースとして「子供が熱を出したから今から帰ります、今日は出勤できません」と子供や家の都合などで早退や欠勤などが目立つパターンが多いです。個人開業歯科医院はスタッフの人数をギリギリで回している所がほとんどですから、急に休まれると他のスタッフの負担が増大し、独身の若いスタッフから「子供子供って、子供を出せば休めると思って。私達はどうなるのよ」と不満が出てしまい労務としても問題ですし、患者様にもご迷惑をおかけすることになります。子供さんが大事なのは十分に理解はできるのですが、医院を経営するサイドからすれば「子供を持っている主婦の臨床復帰」というのはそのように「当院業務よりも家庭を重視して自分の医院を軽視されている」と感じるため、そのような理由から嫌煙する傾向があるのは事実です。(誤解していただきたくないのですが、若くてかわいい子がいいから歯科医院の先生は若い衛生士を採用するのではありません。私も経営サイド側になるまではずっと「歯科医の先生は若い子が好きだから若い衛生士ばかり採用する」と思っていたのですが、そうではないのが経営サイドになってから分かりました。ですので、子供さんのいる衛生士の方が「歯科医の先生は若い子ばかり贔屓して私達ベテランを採用しないのは職務歴があって給与や時給が高いからで若い子を使えば安く済むから採用しないんだ」と口にされているのをよく聞きますが、実際はそうゆう理由から歯科医師の先生はお子さんのいる主婦の衛生士の方の常勤採用やパート採用にも難色を示すのです)

上記理由から、結婚・出産しても復帰しても看護師のように子供を預けて働ける場所が少なく、歯科衛生士は結婚するまでが寿命のケースが多いです。ですので、卒後3~5年まで位しか働けないというのが現状です。

…などなどで「歯科衛生士」という資格自体に魅力がない理由が上げられます。歯科衛生士も最近看護師を真似て「認定歯科衛生士」なるものを各学会(歯周病学会など)で作っていますが、それをとったところで、看護師のように大規模病院でそれなりの地位や役職手当をつけてもらい業務を任されその道のエキスパートになれるわけではなく、結局勤務先は個人開業医院になりますから、ただ単に「認定を取りました」という肩書きがつくくらいで厳しい事を言うようですが、その制度は個人の自己満足の粋を超えないものだと思います。患者様にも「認定歯科衛生士」の認知度はゼロに近いです。実を言うと、私も「歯周病認定歯科衛生士」が出来た時に「認定」を取るために症例を集めて認定を取れる寸前まで行っていたのですが、なんとなくその「認定」を取ってどうなるのか?と疑問に感じ取り下げて現在に至ります。実際働いていると持っていても持っていなくても同じです。

私もはっきり言って歯科衛生士という仕事を後進に薦められるか?と言われたら「同じ年数いくのなら看護師の方が後々つぶしが利くから看護に行ったら」と言うでしょう。

こんな事を書いたら歯科衛生士不足に拍車をかけてしまいそうですが、これが現場の現実です。都市部でも歯科衛生士不足は深刻です。東京・大阪などの都市部でも衛生士確保は非常に大きな問題で、規模が大きい医院で人間関係が密でないところ(歯科医院は小さい規模のところが多くスタッフが少ないので人間関係が密になりすぎて精神的にキツイのでそれを嫌う傾向があります)、矯正や口腔外科や審美歯科などの特殊科、美容整形の歯科で勤務時間も短く給与の高いところ、単純にキレイ・給与がいい医院にしか歯科衛生士が集まらず、規模が小さく一般歯科で医院も古く給与の安い歯科開業医には殆ど歯科衛生士の求人が集らないのが現状です。

ましてや、歯科衛生士学校は各都道府県にはあるのですが県庁所在地などの中心部にしかなく、定員も都市部なら多いところで100名、地方都市になると20名程で定員割れ状態、しかも学生が入学した時点で歯科医師会の年配で顔のきく先生方が歯科衛生士学校の教員から学生を青田刈りするような状況で若い先生の所や地方に新卒歯科衛生士が回ってくることは殆ど稀です。

今、歯科衛生士の人材会社などもありますが法外な値段を請求してくる割にはいい人材が来ないのでアレは悪徳ですので利用しないほうがいいと思いますが、歯科衛生士がいないと衛生実地がとれないので利用する先生方も多いですがトラブルも多いとも聞きます。(歯科衛生士がいると「歯科衛生実地指導料」といって歯磨き指導などで保険点数がとれるので歯科医院ではひとりでもいいので歯科衛生士が喉から手が出るくらい欲しいので、その弱みに目をつけて高額の斡旋料金を請求する歯科衛生士人材会社がたくさんあるわけです)

都市部でさえ、このような熾烈な歯科衛生士獲得合戦が繰り広げられているわけですから、地方になるとさらに深刻です。よほど実家がその地方だったのでとりあえず資格を取った後実家に戻ってきた、旦那が引っ越したからとりあえず子供が出来るまでのパートで…という歯科衛生士しかいないと言うのが現実です。

資格取得後、実家に帰って近くの歯科医院に勤めても都市部に比べると人材も少ないため院内業務が激務になるのですがその割に給与が安い、きっちり教えてくれる先輩の歯科衛生士がいない、意欲のある若い衛生士の場合は勉強をしたくても研修会を受けるにも遠くまで出ないといけないし、先生が研修会に行って来いというようなスタッフ教育サポートに熱心でない場合が多い、学校通学の為に一度都市部に出ているので実家に戻ってくると田舎暮らしに不便を感じまた都市部に戻ってしまう…というケースが多く、地方に戻ってきても衛生士が残留しない傾向があるようです。

また、地方の衛生士の特徴として、衛生士自身が「衛生士不足」なのは良く分かっていますから売り手市場ですので「この医院、イヤ」と思ったらすぐに辞めても求人はたくさんありますから他の医院へ流れ流れ…ということになり、その地方の中で残った衛生士がぐるぐるといろんな医院を巡回している状態になり「○○先生とこで勤めてた衛生士、うちに来たけど、どうよ?」と内々で歯科医師同士で話をしているケースが多いです。

衛生士業務はけっこう激務ですから、ある程度年齢になってくるとフルタイム出勤は身体に堪えますので「楽で給与のいいところ」を求めて衛生士は彷徨います。歯科医師同士で内々に情報は通通ですが悪評を聞いていてもとりあえず衛生士が欲しいので求人がきたらとにかく即採用するのですが、「ここはきつい、先生とあわない」と衛生士側で不満があるとすぐ辞めてしまい他の医院へ…を繰り返す「コネクリ・さすらい衛生士」が多いようです。

あとは一つの医院にずーっと何十年も勤務してその医院の地主のようになっているパターン。臨床に燃えSRPや歯周病の最新治療に力を入れて積極的にバリバリ働くのではなく「とりあえず毎日平和で終わればいいわ」という感じで「歯科衛生士の資格が誕生してまだ衛生士教育が就学年数1年制だったの時に学校を卒業てココに就職しました」というような年齢が50代以上で勤務歴30年以上の強物衛生士の方が多いのが特徴のようです(と、歯科材料店の方から聞きました。ですので、歯科材料店の方はその地区の就業衛生士の勤怠状況をほぼ全員知っているそうです。歩く「人材見張り番」のような存在ですね…苦笑)

これだけは誤解のないようにしていただきたいのですが、地方でも勤勉で頑張っていらっしゃる衛生士の方もいることは確かです。ですが、都市部に比べて頑張ってもなかなか日の目を見る事が出来ない衛生士の方が多く、かわいそうな状況と言うのが現実です。私も開業をしていなかったら田辺では衛生士はしないだろうな…と悪いですが思います。

そんな中で、地方で歯科衛生士を獲得すると言う事がいかに難関で、しかも確保した衛生士を勤労意欲のある歯科衛生士として育てていくと言うことは本当に大変であるとういことです。

それ以前に人を育てる前に人が集まりません…。

そんな中で地方の歯科医院は数時間のパート希望の子供さんのいる衛生士を何名も抱えとりあえず衛生士業務をしてもらうだけで医院内の団結力や技術を強化したり医院内の教育などは行えるなる状態でなかったり、衛生士がいないので歯科助手に歯科衛生士業務をやらせて凌いだり…ということになるわけです。

当院も人手不足を見かねて歯科関係者の方々に「どこの医院でもやっていることやから助手にスケーリングとかさせたら?」と言われるのですが、当院は一般歯科ではなく口腔外科です。全身疾患をお持ちの方が8割を占めますので医療の知識のない素人に口腔内を触らせてることは絶対に出来ません。

それに、全身疾患を見ながら歯周病治療やオペアシストをしないといけないので、衛生士の方もパートで時々来て…という方を採用できません。きっちり常勤できてもらい全身疾患について勉強をしてもらい、口腔外科の基本である清潔不潔(当院はかなり清潔不潔が厳しいです)やオペアシスタント、薬剤や点滴の作り方を覚えてもらったり、生体モニターを管理できないといくら衛生士の資格を持っていても仕事を任せられません。ですので、パートの衛生士は採用できないと言う事情もあります。

ですので、結局口の中を触れるのは主人と私だけになり、診療が回らなかったり、オペをするにもセデーション(大きなオペをする場合はセデーションといって意識を落として手術をするのですが)の時も主人がオペをしながらセデーションの全身管理も行い、私もオペ第一助手をしながら器具追加や点滴追加などの指示があった場合、いちいち滅菌グローブを外して不潔になり外回りをしてから、また手洗いをして清潔になって滅菌グローブを付け直し助手に着く…という、本当に何度もここに書いていますが「Drコトー歯科診療所」状態で診療・オペを行っています。

もっと医院の質を上げるために歯科衛生士が欲しいのですが、なかなか集まりません。マンパワーがもっと集まれば、現在空いている2階を改装してケアフロアを作ったりオペ室を作ったりしたいのですが、いかんせんマンパワーをどう手を尽くしても集まらないのが現状です。あまりにも歯科衛生士が集まらないので、オペの日にパートで外回りに看護師を入れようか…とも考えているくらいです。

歯科助手のスタッフには歯科助手のスタッフの仕事があります。「なんちゃって歯科衛生士」にはさせないのが当院の方針です。彼女達には彼女達にしか出来ない仕事があります。一番大切な患者様との窓口である受付対応、感染予防を行うための器具洗浄管理、患者様に院内で過ごしていただくための清掃・院内管理、診療をスムーズに行うための診療補助など、医療行為以外にも重要な仕事がありますからそちらをきちんとしてもらうことを彼女達にはお願いしており、頑張って働いてもらっています。

彼女達がきちんと受付で患者様を気持ちよく受け入れ、器具の管理をしてくれているお陰で当院も何とか診療が出来ている状態で彼女達がいないと私達は診療すら出来ませんので、当院歯科助手スタッフ2名には本当に心から感謝しています。私達医療従事者だけでは診療は出来ません。

就職難といわれる時代ですが、医療業界は人材不足で雇用難の時代です。

患者様の満足できる診療を提供したい。待ち時間を少なくしたい。医院の質を上げたい。事業計画としてしたい事はあってもマンパワーが足りないので出来ない…。そのジレンマの中での経営の難しい舵取りの中、経営と診療とを切り盛りするのは大変であると感じる毎日です。

医師・看護師・介護福祉士に限らず、歯科衛生士も慢性的に不足しています。行政にはもっと現場の医療従事者がいかに苦労して少ない人数で仕事をして激務をこなしているのか理解をしてもらい改善してもらいたいと思います。

では一番医療業種で人数過剰で余っているのはどの職種でしょうか?

それは「歯科医師」です。

歯科医師過剰で国立大学は歯学部の定員を減らして医学部にその分の予算を回したり、私立の歯科大もしぶしぶ国からの指示で定員を減らしていると言う状態です。

…という「歯科衛生士は集まらずとも歯科医師は余っている」皮肉でブラックなオチでこの記事を締めくくらせてもらいます。

« 医院のお花&庭の紫陽花の植え替え | トップページ | リフォーム打ち合わせも大詰めに…ですが »

とりあえず診療日記」カテゴリの記事

当院ホームページ