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2009年7月20日 (月)

医療はきれいな仕事だけではありません。

私は毎週「経営」や「労務」関係の本を1冊2冊は読むようにしているのですが、先週は夏ばてのため殆ど読めず。頭にも入らないので仕事と関係ない本を選んで読んでました。

前から気になっていた「ブラックジャックによろしく」の作者のお嫁さん佐藤智美先生が「ムショ医」という漫画を書かれていたので買ってみました。佐藤一家は綿密に取材をするので有名。この「ムショ医」も筆者事務所のブログを拝見するとかなり取材をして書かれた模様。

さすがに夫の佐藤氏に比べると作画は落ちますが(佐藤氏は非常にデッサン力があり医療器具の描写もすごいなぁと毎回感心します)、「医療」のよくある裏側を捉えていて読み応えのある内容でした。

「医療」ってTVドラマなどで美化されがちですが、きれいな仕事や感謝されるだけの仕事ではありません。たしかに「ありがとう」をいわれるケースもありますが、たくさんの「ありがとう」を打ち消すほどの「人間の嫌な部分」を垣間見る事もあります。

「ムショ医」は、「ブラックジャックによろしく」のように医療器具や手術がバンバン登場するのではなくそういった「闇の部分の医療」を切り口にして書かれてあります。医療関係者じゃなかったら読後感はあまりよくないかもしれませんが、現実としてよくあることなので医療関係者の方や刑務所関係者の方には「そうだよね、こうゆうことあるよね…」という内容だと思います。「医療の暗部」を垣間見たい方は一度どうぞ。

あと今週読んだ「お勉強」以外の本。最近フィクション系の小説はあまり読んでいなかったのですが、カンブリア宮殿で「おくりびとの価格破壊」といって葬儀会社の方が出られていて「納棺士」なるものを知ったので「おくりびと」の映画をDVDを借りて見る時間もないので、「おくりびと」の原案になったといわれる「納棺夫日記」を読みました。

作者が「元詩人」だけあり、文章の表現が非常に緻密で繊細。久々に「純粋な日本文学を読んだ」という読後感。最近は携帯小説や奇をてらった小説が多いのでフィクション系は苦手になってました。純文学と言われる昔の小説などは季節の移ろいやちょっとした表現にも感性が光るものが多いので好きでしたけど、今の小説は「恋愛」モノばかりで30越した既婚者になった私には「うーーん、そんな甘い恋愛時代もあったのね。でもその恋愛時代が過ぎると過酷な現実やただ毎日が同じように繰り返すマンネリな日常生活やが待ってるんだよ」と妙にリアルに現実を見てしまうので、最近の作家さんの恋愛小説は全く受付けなくなりました。環境と年齢で読むもの、読みたいものは変わってくるものですね。

で、納棺夫日記です。これも「ムショ医」同様に、人間の「暗部」を書いた作品。人の死体なんて触りたくない、死体を扱う人間は下賤とさげすまれる中、主人公は妻子を養うために仕方なく葬儀社に入り最初はお遺体に対して恐怖心や恐れを抱いていたのですが、それが徐々にお遺体に接していくうちに人間の本質を見ていくというお話。漠然としたあらすじですが…。

「医療」も「医療が終わってお亡くなりになられた方を扱うお仕事」もきれいなだけでは済まない仕事です。この仕事をしていると、本当に人間はうわべはいい人を演じていても、中身はドロドロとして色んなものを抱えて生きているんだなと感じることが多いです。

「よく、仕事じゃないのにそんな医療モノや内容の重い本を読むね」と主人には呆れられますが(主人は仕事じゃないときに医療モノを読むのがキライ)、私はこういった「人間の深層心理」に関する本が好きでよく読んでいます。

漫画は深層心理を読み取るのは難しいですが、純文学と言われる本や、村上春樹先生のような実力のある作家さんは季節の移ろいや人間心理の移ろいなどの表現が豊かで読んでいて自分の中で創造し消化できるのでいいですね。村上さんの新作も読んでみたいのですがなかなか時間がなくて。早く単行本化してくれないかなぁ…。(重い本は肩がこって苦手)村上さんはやはり「ノルウエイの森」は秀作ですね。「どういったことのない内容」といえばそれまでですが、非常に移り行く人の心のひだと若い人の心の翳りをうまく表現していて何度も読みました。

最近そういった小説を書かれる方が少なくなったのが残念ですね。芥川賞作家の方もあまり純文学を書かれなくなったので残念です。

これでも高校時代から開業するまで読書大好きだったので本屋のフィクション系の純文学の小説は(推理小説は苦手なので全く手をつけてませんが)だいたい網羅しましたよ。その中でもお奨めは、渡辺淳一先生の初期の作品の「阿寒に果つ」と、多島斗志之先生の「症例A」が個人的には好きですね。あと、有吉佐和子先生のものも好きで全部読みましたが「和宮様御留」や最近放映された「篤姫」なども好きでした。私、暗い小説ばかり好んで読んでいたんで、主人の言うように白衣を脱ぐととても「ネクラ」なんですよ(苦笑)

先週はほとんど勉強せずにこの本を読んでいたので、お休み中に勉強の本を読もうと思います。

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