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2009年11月 7日 (土)

ご心配をおかけいたしました

このたび、11月初旬にやっと退院する事が出来ました。患者様および関係者の皆様には入院中に数多くの励ましを頂き、誠にありがとうございました。

ただ、残念ながら完治して退院というわけではなく治療薬の強い副作用の関係で自宅療養が必要なため、復帰に関しては年明け1月からを予定しております。

その間は引き続き歯周病外来とカウンセリング初診は休診となりますので何卒ご了承の程宜しくお願い申し上げます。

自宅療養が可能となりましたので、医院の事務仕事に関しては自宅で可能ですからこのコラムに関しては以前同様土日の週末更新で始めさせて致します。またご愛顧のほどお願い申し上げます。

年明けに皆様にお会いできますのを楽しみに年内は闘病に専念したいと思います。

今後とも何卒「まさご歯科口腔外科クリニック」を宜しくお願い申し上げます。

私の入院や病気に関する事柄にご興味のある方は続きをお読み下さい。(長文になります)

私事ですが、開業前よりずっと37度代の微熱が続き疲れやすいと日々感じておりましたが、疲れが溜まっているだけだと無理をしていました。そのうち全身の筋肉痛がひどくなったり手の痺れ、めまい、頭痛、ダイエットもしていないのに10キロ以上の体重減少などの症状がでてくるようになり、日差しがきつくなってきた夏前には診療に出るのもやっとの状態になってしまいました。過去の記事にもあるように口腔粘膜や舌の浮腫(むくみ)もひどくなり息苦しさや胸痛を感じ始めました。「これ、自己免疫疾患じゃないか?」と漠然とした不安はあったのですが、症状をみた主人にも同じく「ちょっと症状的に自己免疫疾患っぽいから一度検査してもらったら?」と言われるようになりました。忙しさもあり無理をしていましたが立っているのも辛い状態になり、さすがにこれでは治療するに当たり患者様に対して失礼だとこの8月に病院に検査に行ったところ血液検査で異常数値が出て、そのまま即田辺某病院に入院となりました。

診断は膠原病で「全身性エリテマトーデス(略して「SLE」と言います)」でした。

10万人に数人罹患するかどうかという珍しい病気の一種で国の「難病指定」になっています。まさか自分がそんな宝くじが当たるか当たらないかというような難病に罹るなんて…と診断名を聞いたときは目の前が真っ暗になりました。医師からは副作用の強いステロイド治療薬を大量に使用すること、入院期間が2~3ヶ月と長くなる事を伝えられました。

易疲労、微熱、倦怠感、筋肉痛、関節痛、日光過敏症、口腔内の浮腫、体重減少、激しい頭痛、顔の赤みなど症状はすべてSLEの特徴的なものでした。救いなのは重症SLEに見られる腎臓障害がまだ早期発見で出ていなかったのが不幸中の幸いでした。

自分が難病指定患者なんて…。辛い事実ですが、向き合わないと仕方ありません。

SLEという病気はあまり耳なじみがないかと思いますので簡単に説明しますと、「自己免疫疾患」という病気です。通常健康ならば体内に外部から菌などが入ってきた場合は、それを排除するために体内の「免疫」という機能が働き外部の菌を破壊して正常に戻そうとする作用があります。しかし、SLEの場合は自分の正常な細胞を「外部から入ってきたもの」と勘違いして自分自身の細胞や組織を破壊してしまう病気です。自分で自分の身体を壊していくという怖い病気でまだなぜそのような病気が起こるのか解明されていない難病です。

まず入院期間が長くなるという旨を聞いたときに「医院をどうしよう…」という心配が頭をよぎりました。私の歯周病外来やカウンセリング初診のご予約の患者様はかなり先まで詰まっていましたし、主人の予約の患者様もいっぱい状態です。私の抜けた穴埋めを主人が対応してくれていましたが、患者様に多大なご迷惑をおかけして大変申し訳ない気持ちでいっぱいでした。主人とスタッフ2名にも本当に迷惑をかけてしまい入院中落ち着かない毎日でした。

治療も「ステロイド」という強力な抗炎症作用と免疫力低下を促す薬を大量投与が始まりました。この薬を使うと体内の免疫力が極端に下がってしまうため、健常者より細菌やウイルス感染の危険にさらされてしまいます。ですので、出ても病棟まで、基本的に病室での安静で感染しないようにということでほぼ軟禁状態になりました。「ステロイド」は非常に副作用の強い薬です。当院でも大きな外科手術の際には点滴等で「ステロイド」を使用しますが、副作用が強いので滅多に使用しません。

「ステロイド」は易感染性の他にも糖尿病や骨粗鬆症、大腿骨壊死、骨折、白内障・緑内障の併発など多種多彩な「副作用のデパート」のようなもので医師による細かい全身管理も必要です。他には女性にはつらい副作用として脱毛やムーンフェイス(顔が丸くなる)、食欲増進、毛穴が開き皮脂が出やすくなるためにきびが増える…などなど色々な副作用が出てきます。私もステロイドが始まると髪がバサバサと抜け始めたので伸ばしていた髪を短く切りました。服用してすぐに顔も丸くなり始め、乾燥肌だったのが脂性になり「いやだなぁ…」と内心思いました。

最初の1ヶ月は田辺市内の病院に入院していましたが、和歌山県には膠原病専門医師がいないということで、昔勤務していた神戸大学病院で同僚だった看護師に相談したところ「膠原病は免疫専門の先生に初期治療をしてもらわないと後で取り返しがつかない」と言うことで、9月から神戸大学病院の免疫内科に転院して本格的にSLEの治療を開始しました。実を言うと、私は大学病院時代に血液・免疫内科の病棟にて医師・看護師とチームを組んで口腔内管理の研究をしていました。皮肉にもまさか自分の働いていた病棟に自分自身が入院する羽目になるとは思いもしませんでした。

田辺市内の病院に入院している時は主人が毎晩仕事帰りにお見舞いに来てくれていましたが、神戸大学ではさすがに遠いのでお見舞いに来るのも週末だけになり、さすがに寂しい入院でしたが病気を治すためには…と寂しさにも耐えようとしましたが辛かったですね。また改めて記事にしたいと思いますが、病気になって初めて患者様の気持ちや家族や支えてくれる人の大切さが身に沁みて感じました。入院生活は辛かったですが、いろいろと自分自身を振り返る良いきっかけになりました。

大学病院は高度先進医療を行う場所ですから症状が軽減して初期治療が終わると、入院予約待ちの患者様がたくさんいらっしゃるのでベットを空けないといけません。幸い、私は神戸大学での初期治療も順調で体調も安定し、ステロイドの減量が始まったので11月初旬での退院となりました。退院後は最初に入院していた田辺市内の病院に入院を予定していましたがベットが空かないということで、極力外出を控えてという条件付で入院ではなく自宅療養となりました。まだ完全に治癒したわけでなく治療途中ではありますが自宅に帰れるという事は非常に喜ばしいことではあります。「家で生活が出来る」というごく普通の事がとても新鮮で幸せであると実感しました。

ステロイド服用中ということもあり、風邪やインフルエンザに罹ると肺炎になったりと命取りになるので必要以外の外出はできるだけ控えて自宅で安静にしていますが、診療所の生花だけは「せめて患者様に喜ばれるように」と頑張って日曜日に生けに行っています。まだ本調子ではないのでウロウロするのはよくないのですが、せめてこれくらいはと思って頑張っています。

医師の見立てでは年内は仕事は控えるようにとの事(特に仕事場は医療現場ですから感染リスクも高いので)ですので、年明けからまた歯周病外来とカウンセリング初診を始められるように治療に専念したいと思っています。

自宅療養中にもっとカウンセリングの技術を磨くために人間総合科学大学の人間科学科通信制の3年生に編入し臨床心理学を勉強しています。卒業時には「認定心理士」の資格をとって患者様にも本格的なカウンセリングを行えるよう技術を磨いていきたいと思っています。

患者様の皆様と早くお目にかかれるように、日々療養し年明け復帰に向けて頑張りたいと思います。その間はこちらのコラムにて入院して途中になっていた医院リフォームの記事や入院生活などの事を記載していきたいと思いますので、またお暇なときに目を通していただければ幸いです。

今後とも何卒宜しくお願い申し上げます。

退院のご挨拶に代えて。

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