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2010年4月25日 (日)

膠原病って何?

またまた5月に持病の膠原病「SLE」で再入院になってしまったんですが、患者様に「膠原病って何の病気?」「高い山に登ったらなる病気?」「登山が好きなんですね」とよく聞かれます。

みなさん「高原病」と思われていらっしゃるようです。たしかに「コウゲンビョウ」と聞くと口頭だと「なんか『南アルプスの天然水』風な病気の名前」みたいな響き(笑)

「膠原病」自体があまりメジャーな病気ではないですからねぇ…。ちなみに私は体力がないので登山はしません(笑)

このコラムにちらっとは書いたことがあるんですが、最近よく聞かれるので少しまとめてみました。

こんな症状がある場合は免疫の診れる内科へ行って検査してもらいましょう。(田辺周辺では「南和歌山医療センター」か「はまゆう病院」に免疫が診れる医師がいます。私は前者の病院が田辺で何かあったときの内科のかかりつけ医です。免疫疾患については月1回地元神戸の免疫専門医に診てもらってこちらのかかりつけ内科と連携治療をしてもらってます)

では、みなさんこんな症状はないですか?チェックしてみましょう!(雑誌の病気特集風に読んでみてください)

①原因不明の発熱が続く。37度台の微熱がだらだらと長く続き風邪薬や抗生物質を飲んでも熱が引かない。

②体が疲れやすい。疲れが取れない。異様にだるい。気力がでない。

③ダイエットもしていないのに体重が減ってくる。

④筋肉痛や関節痛がひどい。手に力が入りにくくなる。

⑤目や口が乾きやすくなる。

⑥痛くない口内炎状のものが口の中にできやすい。

⑦足がむくみやすい

⑧顔が妙に赤くなる。

⑨首やワキのリンパが腫れる←これは素人的に分かりにくいですが…

⑩手の指が冷たいものに触ったりすると白っぽくなったりかゆくなる。

なんだか「未病」というキャッチコピーの『養○酒』の宣伝のようですが(笑)

ただの慢性疲労風ですが、上記症状で内科に受診して風邪薬や抗生剤を飲んでも一向に効果が表れない場合、体の免疫異常いわゆる「膠原病」が疑われます。

では「膠原病」とは何ぞや?

ということでまとめると早い話「自分で自分の体を敵とみなして攻撃するので炎症が起こる」というシステム。教科書風に説明すると下記の通り。

本来自分の体を守るための免疫という機構(体内にウイルスやバイキンなどの「異物」が入ったらやっつけたり外に出そうとする防御作用)が過剰に反応したり、自分で自分の体を「異物」と感知して自分自身を攻撃するなど免疫が異常な働きをすることによって血管、皮膚、筋肉、関節、内蔵などに対して同時多発的に発熱、関節痛などの様々な炎症を起こします。このような病気を総称して「膠原病」と言い、原因不明で根治療法が確立されていないので慢性的な経過を辿ることが多く以上のような理由から難病といわれています。

「膠原病」はいろいろ種類があって、本来は細かく分類があるんですが炎症が出現する部位別に大雑把に分けると

■内臓      全身性エリトマトーデス(略してSLE。私はコレ)
■関節      慢性関節リウマチ
■皮膚・筋肉  強皮症、多発性筋炎・皮膚筋炎
■血管       結節性多発動脈炎・血管炎症候群

となります。皆さんがよく耳にする「リウマチ」も膠原病の一種です。そのほかにはシェーグレン症候群などもそうです

ではどうやって検査をするかと言うと、まずは問診と血液検査と尿検査。問診は医師に「熱はどれくらいでいつくらい続いているか」「どこの関節や筋肉が痛むのか」などを紙に書いてまとめておくといいでしょう。血液検査でまず「抗核抗体」という膠原病だとよく出てくる指標のデータがありますのでそれでまずスクリーニング(振り分け)されます。

私も2年くらい微熱が続き開業医の内科に行って「風邪」の診断で風邪薬を長く飲んでました。「開業して慌しかったしきっと慢性疲労」と思っていたんですがあまりにも長引くので主人にお願いして採血してもらい自院で血液検査に出すと抗核抗体がその当時320倍だったのでそのデータを持って田辺周辺で免疫が診れる医師をネットで調べて南和歌山医療センターの内科に受診しました。うちは医院なので特殊ケースですが、普通の内科では熱があっても「風邪でしょう」と血液検査をしてくれずに風邪薬処方で終わってしまう場合が多いので、あまりにも熱が長引く場合は専門の「膠原病内科」「リウマチ科」「免疫内科」を受診しましょう。

血液・尿検査のほかにはレントゲンや必要に応じてCTやMRIなどの検査もあります。ただ「膠原病」は専門医でも診断が難しく「かなり活発な活動期(抗核抗体が上がって補体が下がっている時や腎臓障害が出ているときはデータではっきり分かるんですが、データが出ずに熱だけとか関節痛だけでは診断が困難なときがあるので長く経過観察になる可能性大)」以外は確定診断がでるまではかなり時間がかかるので覚悟しておいたほうがいいです。

各種検査の結果、「膠原病」と診断がついたら治療は免疫のバランスを整えたり炎症を抑えるためにステロイド治療が第一選択です。ステロイドは強力な抗炎症作用がある反面、副作用が非常に多い薬なので慎重な投与が必要になります。そのほかにも免疫抑制剤なども併用する場合もあります。これらの薬を服用すると「免疫抑制」といって体がウイルスやバイキンに感染しやすい状況になるため歯科治療は非常にリスクを伴うので口腔外科で診てもらいましょう。うちは主人も私も免疫疾患は詳しいです(←宣伝…苦笑)

「完全に治る」ことがなく、良くなったり悪くなったりの繰り返しなので一度診断がつくと「一生のお付き合い」と思って気長に付き合おうと割り切ったほうがいいです。

よく原因のわからない病気なのですが、おそらく「ストレス」が誘発原因ではないかと言われています。現代病ですね。

「たかが疲れ」「たかが微熱」と放置しておくと症状が悪化して取り返しのつかないことになりかねません。診察を受けて検査の結果何もなかったらそれで安心でしょうから、もし上記のような症状が長引く場合は必ず専門医に受診して適切な処置を受けられることをオススメします。私自身、大学病院の血液免疫内科病棟で仕事をしていてよく疾患についても知っているにもかかわらず自分自身の症状を「風邪だろう・過労だろう」と勝手に自己診断して放置しすぎて倒れてしまい結局はSLEだったので…。なんとかの不養生です、はい。

というわけで、よく患者様に聞かれるのでコラム欄に記載させてもらいました。もっといろいろあるのですが詳しく知りたいという方は難病情報センターのリンクをご覧下さい。

当院でも口が渇くと言うことで検査をすると「シェーグレン症候群」疑いの方がいらっしゃるので、その場合は免疫疾患を診れる南和歌山医療センターの内科(私のかかりつけ医です。良い先生ですよ)をご紹介致しますのでご安心ください。私もシェーグレン併発なのでお辛い気持ちは良く分かります。

私が「膠原病」と院内やコラムでカミングアウトしているので、最近はリウマチやステロイド服用の方の診察が非常に増えてます。たしかに一般歯科ではステロイド・免疫抑制剤についての知識のある歯科医師は少ないですからね…。その点当院では私自身が飲んでるので詳しいですからカウンセリングでも色々お話を聴いてから治療いたします。有病者外来は火曜午後なので免疫疾患をお持ちの方で歯科治療ご希望の方はこの曜日にご予約くださいね。

…って最後は宣伝かい!って感じですね(笑)

普段診察中に説明できない場合が多いのでコラムでまとめさせていただきました。ご参考になれば幸いです。

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