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2010年8月21日 (土)

患者の立場・医療者の立場(ある本からの個人的考察)

私は膠原病のSLE(全身性エリテマトーデス)を患って現在闘病中です。一応、週に1回だけですが自院の診療所に出て自分の外来をこなしていますので「患者」でもあり「医療を施す側」でもあります。

先日、ある考えさせられる本を読みました。

愛することを教えてくれた娘 膠原病SLEで若くして亡くなった娘からのメッセージ」という本です。娘さんがSLEでお亡くなりになられたようで、そのお母様がご自身の手記と娘さんのブログをまとめたものです。

患者サイドの気持ちもわかるし、医療サイドの気持ちも分かるので複雑な読後感でした。

SLEという病気は診断自体が難しいです。しかも「国の難病指定・特定疾患」になっているだけあってめずらしい病気のひとつでもあります。治療法もあまり確立していないのが現状。ですので、この病気に罹患した人やその家族の方の不安は計り知れないのは、私自身も同じ病気を抱える身なのでよくわかります。

そういった焦る気持ちがそうさせるのでしょうが、この著者は医療関係者(看護師・医師)に対しての期待が大きすぎて医療スタッフや現場への不満がやや多すぎるような気もしました。

これだけはあえて事前にお伝えしておきますが、あくまでもこれは私の個人的な見解ですのでこの本を批判をしているわけではありません。私が実際に以前、病院で働いていた医療関係者であるのと、実際にこの病気に罹患した上でこの本を読んで特にそう思うのかもしれません。(主人も読んだのですがほぼ同じ感想でした)

実際に病棟ではよほどターミナル(終末医療)や救急、医療処置や医療的な看護を要する方でない限り、通常は看護師・医師は患者さんの自立を促すようにするため「手取り足取り」の看護はよほどでない限りしません。実際にスタッフ不足でそこまで手が回らないのが現状ですし、「自分で出来ることは自分でする」ことがリハビリにもなります。患者さんが医療スタッフに「依存」してしまわないようにするのも「看護」のひとつです。

これは「医療関係者」だから分かる暗黙のルール。

でも、実際に病気になった方や初めて入院される方というのは不安ですから「すべて心身ともに医師・看護師がフォローをしてくれる」と思いがちです。そこに患者サイドと医療サイドの温度差というか価値観の違いがでてきてしまうわけで。

こちらの本に書かれてあるもので「コールを押しても自分のところには看護師がなかなか来ない」「医者の態度が横柄」「看護師によって態度が違う」など医療スタッフに対する不満がかなり書いてありますが、コールしたときの詰所の状態がどうなっているかも何となくわかりますし、私も著者の娘さんと同じ検査をしたり同じ病状になった事があるので分かるのですが「医療スタッフも人間だし数も限られているんだから、もう少し相手の状況や現場の状況なども考えてあげてもいいんじゃないかな」と感じました。(ちなみに私はこの方が受けられた検査等を付き添いなしですべて一人でうけました。主人が仕事で付き添えなかったからです。入院中の洗濯などの身の回りもすべて一人でしました。ナースコールも長い入院中、点滴抜去などの医療行為以外はコールせずに動けるうちは用事があれば詰所まで歩いて行ってました。この患者さんは常にご家族の方が付き添ってくれて身の回りの世話から何から何までご両親がされているので、その点はこの患者さんは幸せだと私は感じました。実際、病棟ではよほどターミナルでない限り常時「付き添い」の方は少ないです)

医療スタッフに対する不平不満の羅列を読んでいると正直胸が痛くなりました。

患者サイドの不安な気持ちもわかります。でも、医療スタッフは「自分専属」ではありません。病気になり気弱になったりイラだったりしてしまう気持ちも分かります。「もっと私をかまって」という気持ちも分からなくないです。ですが、他にも同じように病を抱えた多くの患者さんがいますので一人の患者さんに対してスタッフが「かかりきり」にはなれないんです。ですので、不平不満ばかりではなく医療スタッフとの歩み寄りも必要ではないかと思います。

先般、医療カウンセリングの授業を聞いていて講師の先生がおっしゃっていたのですが「白衣を脱いだら病院のことは忘れなさい」とおっしゃっていました。医療スタッフも人間です。特定の患者さんに感情移入しすぎると冷静な判断が出来なくなるからです。それを患者さんから見ると「冷たい」「機械的」と感じるのかもしれません。

何が正しいのか、私も分かりません。

でも、これだけは分かって頂きたいのは医療スタッフはちゃんと必要に応じて患者さんを診て・看ています。そして本当に必要なときには必ず援助をしてきます。

不平不満は患者さん・医療サイドお互いにつらいだけです。不信感が余計に不信感を高めスタッフに対して見えない壁を作ってしまい、患者さんが余計に病棟内で孤立してしまう可能性があります。

「なんで私がこんな病気に?」という気持ちはよくわかります。でもなってしまったからには、その事実を受け止め、残された時間をどう有効に使うかという「受入れ」が必要です。不平不満ばかりが残された時間の大部分を占めるのは悲しいことです。

えらそうに書いていますが、私も「受入れ」までには非常に時間がかかりました。

「患者・医療サイド」どちらの気持ちも分かるだけに、つらい本でした。

私は入院中に同じSLEやガン治療をされている患者さんと知り合いになり、励ましあいながら闘病をしてきました。たまたま私の周りにいらっしゃった患者さんが前向きで医療スタッフに対して「依存」せずに「残された時間を大切に」「病気と闘う」という方ばかりだったので恵まれていたのかもしれません。

病棟で見ていると「家族」の方が動揺すると患者さんも余計に不安になり「不穏」になるケースが多いです。ですので、患者さんを支える家族の方が、患者さんを差し置いて医療スタッフにしゃしゃり出たり不平不満を述べることは良くないです。医療スタッフもそれを一番嫌がります。治療方針や看護方針に対して「不平不満」「疑問」があるようなら患者さん自身の口から詰所など「他の患者さんがいないところ」で医療スタッフ(主治医とか師長とか)に伝えるほうがベターです。

家族はギスギスせず温かく患者さんを精神的にフォローすべきではないかと思います。

うちの場合は主人が医師で勤務医時代はターミナルをかかえてお見送りをよくしていました。主人自体が「医療サイド」の人間なので「患者家族」があまりでしゃばるとお互いやりにくいというのを十分理解していたので、「先生と看護師さんにおまかせします」でお願いしていました。同業者として「患者家族、まして医師」なのでその立場の家族がでしゃばるという、その行為が一番嫌がられることを主人自体が身をもって分かっていたからです。なにか私の病状に対しての質問があっても詰所で他のスタッフがいないときに主治医か師長に相談していました。病状が悪くても私の前ではいつも明るく振舞ってくれて「病気心配してくれてるの?」と私が思うくらいあっさりしてました。

病気になると不安がつき物です。

でも、自分で壁を作らずに医療スタッフと向き合うことも必要ではないかなと感じました。医療スタッフとよい関係をもち、仲良くしておくことが長い病棟生活では大切なことです。そうして信頼関係を築いていくことが快適な入院生活を送る上でとても重要です。病棟は個室であろうと大部屋であろうと「病気を持った方たちの共同生活の場」であることを忘れないで下さい。病気で入院しているのは自分だけではありません。あと、ご家族の方も対応を少し考えられたほうが良いかと思います。

患者として医療関係者として個人的な見解まで。

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