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2013年5月12日 (日)

精神疾患の方との向き合い方

どこまで続くか真面目記事のコーナーです。

今日は「精神疾患の方との向き合い方」です。

私は一応心理士の資格を持ってます。

うちの医院は歯科とは違い口腔外科を標榜しているだけあって口腔心身症の方や精神疾患をお持ちの方のご来院が多く専門的に対応する必要性に駆られたため、30半ば過ぎてからあっぷあっぷで資格を大学に取りに行きました。

大学病院勤務時代も、なぜか私は精神科の患者さんに当たる率が高く…(そのころは心理士を持ってなかったので対応に苦慮したんですが)ちょっとその思い出話を交えつつ、精神疾患を持つ方との接し方を一応心理士の目線でお伝えします。


私が勤めていた大学病院の精神科には病棟とは別棟に「なんとか寮(名前は伏せてます)」という精神科の入院棟があります。いわゆる「閉鎖病棟」なんですが、寮内には畑とかあって入院患者さんがレクリエーションの一環で農作業をされたりしてました。普通の閉鎖病棟よりは良い環境だったように思います。

で、入寮者で歯科治療が必要な患者さんは看護師さんに付き添われて寮から口腔外科の外来にいらっしゃるんですが、なぜか私は若い女性の入院患者さんに好かれる傾向があったように思います。

特に多かったのが青年期のボーダーの女の子たち。

ボーダーとは「境界性人格障害」という精神疾患のひとつです。

境界性人格障害とは よくわかる精神疾患より抜粋

『自己アイデンティティ』が拡散して自分の存在意義や生きがいを見失いやすく、そういった虚無感や虚しさの感覚によって対人関係(異性関係)やギャンブル、ドラッグ(アルコール含む)、食事(摂食障害)、乱れた性関係などに過度に依存してのめり込みやすくなるという問題があります。気分の波が激しく感情が極めて不安定なので、さっきまで理想化して褒めていたような人に対しても、何か自分に否定的な発言などがあると急に怒り出して、攻撃的な罵倒が止まらないほどに興奮してしまうこともあります。

少しわかりやすく意訳すると幼少時に両親から適切な愛情を注いでもらえず常に孤独感に苛まれ「見捨てないで」という欲求が人より強く、精神的依存が正常域を越してしまって病的になっている状態…とでも言いましょうか。

医療者は対応に気を付けないと「依存」の対象になってしまうので専門的な知識がないと危険です。大学の授業にも「精神疾患の方との接し方」についての講義があったので非常に役立ってます。

実は、私はボーダーの方に好かれる傾向がありまして…。

最近は気を付けるようにしてるのですが、勤め時代の若い頃はまだそういった「対応手段」を知らなかったので知らず知らず依存の対象にされてしまう事が多く「専門知識がないとやっぱりいけないなぁ」と思ったことがありました。

一例をあげてみましょうか。

ボーダーで精神科に入寮していたA子ちゃん。中学3年生。度重なるリストカッターで両腕は痛々しく傷まみれ。摂食障害により歯周病が重症化し私が担当になりました。最初は精神科の看護師さんに連れられて看護師さんの監視下での治療だったのですが、慣れてきたので送り迎え以外は看護師さんの同席はなくなりました。

看護師さんの監視がなくなったとたん、「あのね~」と治療そっちのけでおしゃべりが多くなるようになりました。さすがに他の予約患者さんもいるので手短に話をしてあげる程度だったんですが、思いのほかそれが彼女には嬉しかったらしく「歯茎が痛い」と言ってはしょっちゅう寮から外来に来るようになりました。「どこも悪くないよ」というと「先生とお話したかったから。痛い、口腔外科の外来に行きたいと暴れてやるの。じゃあ看護師さんが連れてきてくれるから」とあっけらかんと言い放ちます。

まあ、A子ちゃんが帰った後に精神科に診療依頼書の返書で「口腔内は大丈夫なんで…」と報告を入れておくんですが。あまり依存にならないよう一応精神科でもそうそう要求は通さないようでこれでも口腔外科外来に行くのに5~6日「我慢しなさい」と押さえてるらしいです。

A子ちゃんは他の入院患者に「あの口腔外科の先生、優しいよ~」と言いふらすらしく、ご指名で何人か同じ病状の女の子を担当する羽目に。

しかもA子ちゃんは他の入院患者に私を指名するように仕向ける割には「A子以外と仲良くしないで!」となんかすごく拗ねられたりと、とにかく振り回されます。

ああ、これがボーダーか…とボーダー患者の接し方に注意しないといけないなと身に染みて感じました。

ある日、A子ちゃんは退院するらしく、その前に口腔外科を受診したいとのことで私のところに来てくれたんですが(彼女は大学病院から遠く離れた所に住んでるので退院するとたぶん一人ではここまで来れない)「私、退院になっちゃうの。もう会えないかもしれないからね、A子、コレ、あげる。ずっと私だと思ってそばに置いててね」と何やら包装紙に入ったものを手渡されました。

「ずっと私が大切にしてたものなの。開けて開けて」とせがむので恐る恐るあけると、そこにはNTT Docomoの携帯電話の「ドコモダケ」のストラップ。

しかも血まみれ…。

ぎゃああああああああぁぁぁぁ…(声にならない心の叫び)

A子ちゃん「私のこと忘れてほしくないから、ほら、ここ切って私の血を付けておいたの。看護師さんに怒られちゃったけどこれは絶対に取りあげられたくないから今まで必死に隠しておいたの。切った日には必ずこれに私の印を残したくて。だって先生に渡したかったから」と嬉々としてリストカットした腕を見せてきます。

「あはは…ありがとう」としか言い返せない若かりし頃の私でした。

…って、ココを読んでる皆さんならご存知かと思いますが、医療現場では「血」は一番不潔。血まみれドコモダケを素手で渡された私の気分、わかります?

A子ちゃんが帰った後、一部始終を見ていた他の先生達がニヤニヤしてやってきて「○○さん(私の旧姓)、モテますなぁ」とからかわれてしまいました…。

「ちょっと、これどうしよう」

さすがに素手で血まみれのドコモダケを渡されたので手を洗って手袋をはめた状態で悲惨な状態のドコモダケを持つ私に先生達は「うわぁ~、生々しい。なんだかなぁ」とか「記念に貰っとけば」と他人事状態。格好のネタ扱いです。

あまりにもガヤガヤと騒いでいたもんだから、「あんたたち、何騒いでるの外来中でしょ?」と口腔外科外来の師長がやってきました。

ここは大御所、口腔外科では一番年寄株のコワイ師長が「ちょっと、そんな血液のついたものは不潔だからさっさと処分しなさい」と私の手からドコモダケを奪い取って医療廃棄物へ…。そして「精神疾患の方への対応をきちんと勉強しないからこんなことになるんでしょう。ちゃんと勉強しなさい」とイヤミも忘れず付け加えられました(苦笑)

A子ちゃん、ごめんね…。と心の中で謝っておきました。

まあ、そんな大御所師長は大学病院時代よくお世話になり今でも交流があって年賀状が毎年届くんですが。

ドコモダケ以外にも…まあ、いろいろその手のネタはたくさんあるんで機会があれば。

大御所師長の言うように、精神疾患をお持ちの方やボーダーの方は治療態度を気を付けないといけません。適度な距離をとってきちんと「医療者と患者」という関係を守らせないといけないなと反省した一件でした。

開業を始めてからは入院が必要なほど極度な精神疾患の方の治療はさすがにありませんが、軽度の精神疾患の方やご自身が気づかれてないボーダーの方は多くいらっしゃいます。主人や私はある程度修羅場を潜り抜けてるので「あ、そうかな」とすぐ見抜けるんである程度の対応ができるのですが、久保や歯科助手さん達はまだ分からないので「依存」されてるところをよく見かけます。

特に久保は3年目である程度臨床業務が出来るようになってきたので患者さんからの依存度が高くなっている傾向が見られます。今後は依存されないような対応を少しずつ教えていってます。

精神疾患やボーダーの方を批判しているのではありません。ただ、そのような疾患のある方に不適切な対応(必要以上に優しく接してしまうなど)をしてしまうと余計にその方を傷つけてしまうので、「医療者と患者」の一定の距離を空けて適切な対応が必要だ、ということを指導しないといけないなと最近感じています。

本当に口腔外科は一般歯科と違い特殊な診療科です。

本当に精神科領域は奥が深くてまだまだ勉強が必要だなぁと感じる今日この頃です。突き詰めていくともっと知りたくなるので心理系の大学院に行こうか悩み中です。

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